賃貸住宅を社宅として借り上げ、従業員に貸与するとき、注意することは?
従業員に社宅や寮などを貸したとき(住宅の利益)
従業員に社宅や寮などを貸した場合、これらが賃金とみなされる場合があるので注意が必要です。つまり、賃金台帳に載っていなくても、賃金としてオンされるため、労働保険料や社会保険料、源泉所得税が不足していると指摘をうける場合ことが考えられます。
それぞれ法律によって取扱いが違いますので、それぞれについて見ていきましょう。
1.労働保険の場合(労働基準法含む)
労働法保険料では通達にて
1 所定貨幣賃金の代りに支給するもの、即ち、その支給により貨幣賃金の減額を伴うもの。
2 労働契約において、予め貨幣賃金の外にその支給か?約束されているもの。
については賃金とされていますが
例外として次に該当するものは賃金とされないとなってます。
(1)代金を徴収するもの(ただしその代金が甚だしく低額なものは別)
(2)労働者の厚生福利施設とみなされるもの
(昭和22.9.13基発17)
このように福利厚生として住宅施設を無償で供与されている場合、原則として賃金とされません。原則というのは、住宅の貸与を受けていない者に対して均等手当が支給されていない場合です。
もし、住宅の貸与を受けていない者に対して均等手当が支給されている場合はさらに通達で次のようにきまっております。
「住宅の貸与を受けない者に対して定額の均衡給与(住宅を貸与されている者との均衡上支給されるいわゆる住宅手当)が支給されている場合には、住宅貸与の利益が明確に評価されているのであるから、その評価額を限度として住宅貸与の利益を賃金として取扱う。」(昭30・10・10基収2386号)
つまり、6万円の住宅を会社から無償でうけているが、受けていないものには3万円の住宅手当が支給されていたとすれば3万円が賃金とみなされるんですね。
しかし、ここで注意すべきことは、「均衡給与が支給されている場合であっても、均衡給与の3分の1以上の額を住居の借料として徴収する場合には、福利厚生施設とみなす。」(昭30・10・10基発644号)という通達があることです。
つまり、他の者には均衡給与が支給され貸与をうけているものからも一部徴収するという場合は、貸与をうけていないものには3万円の均衡給与がしきゅうされ、6万円の貸与を受けているものからは1万5千円の徴収をしていたとすると、賃金にはならないのです。ややこしいです。(^^ゞ
例
貸与を受けない者 (社宅などを利用しない者) |
貸与を受ける者 (家賃6万の社宅などを利用する者の場合) |
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待遇 | 待遇 | 取扱い |
均等手当なし | 無償 | 賃金に該当しない。 |
均等手当3万円支給 | 費用徴収なし | 3万円を賃金とする |
1万5千円徴収 | 3分の1以上の費用徴収 なので福利厚生とする |
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5千円徴収 | 5千円を賃金とする |
2.社会保険の場合
社会保険の場合は、労働保険と取扱いが異なります。
住宅の利益は、都道府県ごとに定められた標準価額から本人負担分を控除した額が報酬(賃金)とみなされます。さきほどの例で、Aの住宅の居住部分は全部で 18畳であるなら、時価は1畳当たり910円(香川県の場合)ですので、標準価額は16,380円となります。
ただし、標準価額以上が本人負担の場合は、その住宅の利益は報酬(賃金)とはせず、福利厚生施設となりますので、Aの住宅の利益は、社会保険上も報酬(賃金) とは解されません。
3.税金(源泉所得税)の場合
税金(源泉所得税の場合)は、従業員から1ヶ月あたり一定額の家賃を受け取っていれば給与として課税されません。この1ヶ月当たりの一定額の家賃は、次の3つを合計した金額を基準とします。
(1)(その年の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2)12円×その建物の総床面積(㎡)/3.3(㎡)
(3)(その年の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
以上の(1)から(3)を合計した金額が、従業員に貸す社宅や寮などの1ヶ月あたりの家賃の基準となります。従業員に無料で貸す場合には、この基準となる金額が給与として課税されます。従業員から基準となる金額より低い家賃を受け取っている場合には受け取っている家賃と基準となる金額との差額が給与として課税されます。
ただし、従業員から受け取っている家賃が、基準となる金額の50%以上であれば、受け取っている家賃と基準となる金額との差額は、給与として課税されません。
なお、看護婦や守衛など特殊な職業で、仕事を行う上でのやむを得ない必要に基づいて特別に社宅や寮を貸す場合には無料で貸しても給与として課税されない場合があります。
以上のように、それぞれ法律によって取り扱いが違いますので社宅や寮がある場合はのことを考慮して、賃金とならない範囲で本人の給与からいくらか徴収することをおすすめします。そうでないと、保険料、税金の計算の際、賃金分としてのプラスアルファの計算が必要となりますので、事務量が増し面倒になるでしょう。