労働協約を締結すれば不利益変更は可能か?
労働協約による労働条件の不利益変更の留意点!
まず・・・
労働協約による労働条件の変更については、労使自治を尊重する観点から、仮に不利益変更であっても、原則として有効とされます。
【参考判例】
朝日火災侮上保険<石堂・本訴>事件(最判平9・3・27)は、定年年齢・退職金支給率の不利益変更に関するものであったが、最高裁判例は、労働協約の締結により労働条件が引き下げられた場合であっても、その協約が特定のまたは一部の組合員をことさら不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど、労働組合の目的を逸脱して締結されたといった特別の事情がない限り有効であるとしています。
しかし・・・
労働協約の効力は、原則として組合員だけに及びます。故に、協約が締結できても、非組合員との関係では、就業規則の変更という形で対応することになります。この場合に、組合の合意は、就業規則変更の合理性判断の際に、使用者に有利なポイントとなります。
また・・・
事業場の4分の3以上で組織する多数組合と協約を締結すれば、他の同種の労働者にも当該協約が適用されることになります(これを一般的拘束力(労組法17条)といいます)が、不利益変更の効力については、組合員の場合と比べると厳しく判断されることになります。
【参考判例】
朝日火災侮上保険事件(前記と同じ労働条件変更について、非組合員が争った例(最判平8・3・26))において、最高裁は、労働協約の効力を当該非組合員に及ぼすことはできないとしています。なお、一般的拘束力は、有利・不利に関わらず、他の労働組合の組合員に対して及ぼすことはでません。