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経営不振による解雇を言い渡されましたが、この解雇はどこまでが合法なのでしょう?

使用者が一方的に行う労働契約の解約の意思表示を「解雇」といいます。
そして、 解雇の中でも不況などを理由として発生する企業の経営難など経営上の理由により行われる解雇を一般的にに「整理解雇」といいます。
これは過去の裁判の判例により現れてきた慣例であり、直接、整理解雇について制約を定めた法律はありません。裁判では整理解雇の有効性としては次の4つの項目を考慮することが慣例となっています。

【整理解雇の四要件】
1.人員削減の必要性があること
2.解雇回避努力義務が尽くされていること
3.被解雇者の選定が合理的であること
4.解雇手続きが妥当であること

この四要件については、1つでも欠けると無効になるという考え方(4要件説)とこれら4つの要素に関する諸事情を総合的に判断するという考え方(4要素説)があり明確にはなっておりません。
これについては、厚生労働省の「今後の労働契約法制のあり方に関する研究報告書(H17.9.15 最終報告)」にて
「4要件説を採ったとしても各要件の認定を柔軟に行えば解雇は認められやすいこととなり、また4要素説を採ったとしても各要素の認定を厳格に行えば蚕は認められにくくなることから必ずしも両説の対立が大きいとはいえない」とされており、それぞれの中身により関係してくると考えられます。
以下が最近の裁判例のそれぞれの判断ですので、ご参考ください。

1.人員削減の必要性
★「経営合理化策」の人員削減予定(25名)整理解雇通知記載の解雇予定人数(20名)実際の被解雇者数(15名)に開きがあるゆえに人数についての見当が十分なのもであったと認めるのは相当ではない(横浜商銀信用組合事件 地判H19.5.17)
★勤続25年以上の正社員6名分の人員削減が必要であることを説明していたにもかかわらず 実際には10名の解雇を行ったことについて、その必要性については立証が尽くされていないと判断(関西金属工業事件 高判H19.5.17)
★負債の存在を主張するのみで、それ以上には、その発生原因や債務の支払いが不能であったかについて主張立証しないから、経営が本件解雇当時破綻状態で破産せざるを得ない状況であったとは認められない。巨額の負債を抱えるため、紡績業を継続したとしても将来的に破綻に陥ることが避けられないことを主張立証する必要があるが、本件解雇前に、そのようなことを検討した事実は認められず、主張立証もない(山田紡績事件 地判H17.2.23)

2. 解雇回避努力義務
★希望退職の募集は解雇回避の一手段に過ぎず、整理解雇に先立って必ず実施しなければならない性質のものではないが、職員の意思を尊重しつつ、人員および人件費の削減を図るきわめて有効な手段であることを考慮すると、相当な理由なくこの措置を講じなかった点は解雇回避義務を怠っていたと評価せざるを得ない(横浜商銀信用組合事件 地判H19.5.17)
★副支店長級の職員を一般職員へ降格することが必ずしも非現実的な措置であることはいえず、大量の自己都合退職者を出し、相当数の職員を新規採用していたところであるから、配置転換の打診を行っていれば相当数の余剰人員を吸収できたはずである(横浜商銀信用組合事件地判H19.5.17)
★本件解雇当時のYの厳しい経営状況に加えて、Xの貢献度やXが同僚や上司との間で深刻な人間関係上の問題を生じさせていたこと等を考慮すると、Xを他部署に配点させることを試みなかったとしてもYが解雇回避努力を行ったとまではいえない(CSFBセキュリティーズ・ジャパン・リミテッド事件 高判H18.12.26)

3.被解雇者選定の合理性
★年齢・職位・考課といった要素を選定基準に用いることは、それぞれが客観的かつ合理的な選定基準として用いられている限り、不当とまではいえないが、どの要素を重視し、どの要素による分類をはじめに行うかにより、具体的人選はまったく異なるものとなりうるため、年齢・職位・考課といった要素のうち、何を重視し、どのような順序であてはめたかにつき検討し、評価しなければならない(横浜商銀信用組合  事件 地判H19.5.17)
★支給給与額と売上実績(貢献度)とを考慮してXを選定したことが不合理とまではいうことができないものと認められる(CSFBセキュリティーズ・ジャパン・リミテッド事件 高判H18.12.26)

4.手続きの相当性
★YはXに対して本件退職勧奨から本件解雇通知までの4ヶ月ほどの間に3回にわたってXおよびYが加入した組合と団体交渉に応じて本件退職勧奨の必要性、Xを対象者として選定したことの理由、そして退職パッケージ等について説明をし、それにもかかわらず本件退職勧奨の撤回を求めるXおよび組合との間で合意に至らなかったため、その後においても団体交渉や都労委のあっせん手続きに応じるなどし、それでもなお合意に至らなかったという経緯からYにおけては本件退職勧奨および本件解雇についてXの納得が得られるよう相応の努力をしたものということができる(CSFBセキュリティーズ・ジャパン・リミテッド事件 高判H18.12.26)

 

 

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