雇用保険法改正(平成15年5月)
今回の改正の趣旨は次のようなものです。
- 早期再就職の促進
- 多様な働き方への対応
- 再就職の困難な恐恐に対応した重点化を図ると共に、保険料率について労使負担の急増の緩和に配慮した上で、制度の安定的運営のために必要最小限の引き上げを行う
以下が具体的な改正内容です。
- 給付率上限額の見直し
給付率上限額の見直し基本手手当日額と最終食事賃金の逆転現象の解消として、基本手当日額再就職時賃金を上回る者が多い高賃金層の給付率、上限額が変わります。
給付率
60%~80%⇒50%~80% (60歳以上65歳未満については50%~80%⇒45%~80%)
上限額
30歳未満 8,676円⇒6,580円 30~44歳 9,642円⇒7,310円
45~59歳 10,608円⇒8,040円 60~64歳 9640円⇒7,011円 - 60歳以上で離職した者の基本手当の日額について、60歳到達時点における賃金日額とくらべて高いほうをとるとされていた特例が廃止されます。
- 育児・介護休業、勤務時間短時間措置により賃金が喪失、低下しているときに倒産、解雇等のりゆうにより離職したものについては、休業開始前または措置前の賃金日額により基本手当の日額が算定されるようになります。
- 就職促進手当の創設
いままでの就職促進給付が整備され、就職促進手当(就業手当、再就職手当、常用就職支度手当)に統合されました。給付日数を3分の1以上かつ45日以上残して就職した場合、就職期間の各日について基本手当日額の30%(いままでは3分の1だった)を賃金に上乗せして支給されます。
支給要件※1 | 対象 | 支給額の上限 | |
A | 離職前の事業主でないこと | 受給資格者が常用就職でない職業に就職した場合(就業手当:新設) いままでは1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められるとき(以下、常用就職という)しかもらえませんでしたが、今回より支給されることとなります。 |
60歳未満は 6,110円 60~64歳は 4,927円 |
B | 待機期間(最初の7日)が経過した後であること | 受給資格者が常用就職した場合(再就職手当:見直し) | |
C | 求職の申し込み前に雇用予約がされてないこと | 受給資格者が身体障害者その他の就職困難者に該当する場合(常用就職支度金:見直し) この場合は基本手当の日額に90(90未満の場合は支給残日数に相当する数。ただしその数が45を下回る場合は45)に3割を乗じて得た額とされます。 |
※1.自己都合等で給付制限がある場合の1ヶ月以内の就職については職安紹介の紹介でないと対象にならなかったが、新たに、民間の職業紹介事業者の紹介でも対象になることとなった。
また、Bの者が就職促進手当の支給を受けた後、受給期間に係る離職日の翌日から1年以内(受給期間内という)に倒産、解雇等の理由により再離職した場合はその後支給残日数に相当する基本手当の支給を受け終わる日まで受給期間を延長することができます。
また、Bの者の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上ある場合は、早期再就職支援金が支給されます。これは基本手当の所定給付日数の支給残日数に40 パーセントを乗じた額を支給するものです。ただし、これを受けた場合は再就職手当受けられません。どちらになるかは職安が決定し、早期再就職支度金の場合は(財)高年齢者雇用開発協会が最終的に支給決定を行い、ここから指定の口座に振込みとなります。ただしこの支援金の場合は一時所得として課税されます。 (50万以上の場合に課税になります。)
- 通常労働者とパートタイム労働者の給付内容の一本化
いままで通常労働者とパートタイム労働者として区分けされていたの基本手当の所定給付日数は今後、倒産・解雇による離職者とそれ以外(自己都合)とに区分けされ、通常労働者もパートも一緒の取り扱いとなります。なお、就職困難者については通常労働者として一本化されます。
<通常>被保険者であった期間 所定給付日数 20年以上 150日 10年以上20年未満 120日 10年未満 90日
<就職困難者(障害者等)>年齢 被保険者であった期間 1年以上 1年未満 45歳以上65歳未満 360日 150日 45歳未満 300日 150日
<特定受給資格者>年齢 被保険者であった期間 20年以上 10年以上
20年未満5年以上
10年未満1年以上
5年未満1年未満 60歳以上65歳未満 240日 210日 180日 150日 90日 45歳以上60歳未満 330日 270日 240日 180日 90日 35歳以上45歳未満 270日 240日 180日 90日 90日 30歳以上35歳未満 240日 210日 180日 90日 90日 30歳未満 - 180日 120日 90日 90日
<通常>被保険者であった期間 所定給付日数 1年以上 50日 1年未満 30日
- 訓練延長制度の複数回受講制度の拡充
公共職業訓練の複数回受講等の特例措置の対象年齢が35~59歳(現行45~59歳)へと拡充され、特例措置の終期が平成16年度末から19年度末に延ばされます。 - 教育訓練給付の見直し
パソコン、英会話など、自己啓発費用の助成を目的とする「教育訓練給付」の給付率を8割から4割に引き下げられ、上限額は30万円から20万円になります。ただし、いままで5年以上被保険者期間がなくてはいけませんでしたが、今回より3年以上被保険者期間があるものについても2割、10万円までの教育訓練給付が受けられることになりました。
さらに、離職したものについては1年までときめられていた受給期間については育児等のために離職したものについては受給期間の延長が設けられることになりました。 - 高年齢雇用継続給付の見直し
支給要件が見直され、60歳到達時の賃金日額に30を乗じて得た額の100分の75に相当する額を下回った場合(現行100分の85)に支給されることになります。また。給付率を最高25%から15%に引き下げられます・・・。支給限度額は35万880円(現行38万5,635円)になります。 - 保険料率の改定及び前2年間の据置き
雇用保険の失業等の給付に係る保険料率を1.6%(農林水産業、清酒製造業および建設業については1.8%)とされます。ただし、16年度末までは付則において1.4%とし、2年間据置きがされますが弾力条項によってどうしても変更しなければならなくなった場合は変更することができるようになってます・・・。