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過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等
(平成18年3月17日付け基発第0317008号)

1.趣旨

長時間にわたる過重な労働は疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られている。働くことにより労働者が健康を損なうようなことがあってはならないものであり、当該医学的知見を踏まえると、労働者が疲労を回復することができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。
  このため、厚生労働省においては、平成14年2月から「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(以下「旧総合対策」という。)に基づき所要の対策を推進してきたところであるが、今般、働き方の多様化が進む中で、長時間労働に伴う健康障害の増加など労働者の生命や生活にかかわる問題が深刻化しており、これに的確に対処するため、必要な施策を整備充実する労働安全衛生法等の改正が行われたところである。
  本措置は、このような背景を踏まえ、過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として、以下のとおり、事業者が講ずべき措置等を定めたものである。

2.時間外労働の削減

(1)時間外労働は本来臨時的な場合に行われるものであり、また、時間外・休日労働(休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間をいう。以下同じ。)が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強まるとの医学的知見が得られている。このようなことを踏まえ、事業者は、労働基準法第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の締結に当たっては、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者とともにその内容が「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号。以下「限度基準」という。)に適合したものとなるようにするものとする。
  また、限度基準第3条ただし書又は第4条に定める「特別な事情」(限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる事情)を定めた36協定については、「特別な事情」が臨時的なものに限るとされていることに留意するものとする。さらに、月45時間を超えて時間外労働を行わせることが可能である場合であっても、事業者は実際の時間外労働を月45時間以下とするよう努めるものとする。
(2) さらに、事業者は、休日労働についても削減に努めるものとする。
  事業者は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等に関する基準について」(平成13年4月6日付け基発第339号)に基づき、労働時間の適正な把握を行うものとする。
(3)事業者は、裁量労働制対象労働者及び管理・監督者についても、健康確保のための責務があることなどに十分留意し、当該労働者に対し、過重労働とならないよう十分な注意喚起を行うなどの措置を講ずるよう努めるものとする。。

3.年次有給休暇の取得促進

事業者は、年次有給休暇を取得しやすい職場環境づくり、計画的付与制度の活用等により年次有給休暇の取得促進を図るものとする。

4.労働時間などの設定の改善

事業者は、過重労働による健康障害を防止する観点から、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法第4条第1項に基づき、労働時間等の設定の改善に適切に対処するために必要な事項について定める労働時間等設定改善指針が平成18年4月1日から適用されることに留意しつつ、必要な措置を講じるよう努めるものとする。

5.労働者の健康管理に係る措置の徹底

(1)健康管理体制の整備、健康診断の実施等
ア.健康管理体制の整備及び健康診断の実施
  事業者は、労働安全衛生法に基づき、産業医や衛生管理者等を選任し、その者に事業場における健康管理に関する職務等を適切に行わせるとともに、衛生委員会等を設置し、適切に調査審議を行う等健康管理に関する体制を整備するものとする。
  なお、事業場が常時50人未満の労働者を使用するものである場合には、地域産業保健センターの活用を図るものとする。
  また、事業者は、労働安全衛生法に基づき、健康診断、健康診断結果についての医師からの意見聴取、健康診断実施後の措置、保健指導等を確実に実施するものとする。特に、深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、6月以内ごとに1回の健康診断を実施しなければならないことに留意するものとする。

イ.自発的健康診断受診支援助成金の活用等
  事業者は、深夜業に従事する労働者を対象とした自発的健康診断受診支援助成金制度や血圧等一定の健康診断項目に異常の所見がある労働者を対象とした二次健康診断等給付制度の活用について、労働者への周知に努めるものとするとともに、労働者からこれらの制度を活用した健康診断の結果の提出があったときには、その結果に基づく事後措置を講ずる必要があることについて留意するものとする。
  また、事業者は、労働安全衛生法に基づき、労働者の健康保持増進を図るための措置を継続的かつ計画的に実施するものとする。

(2)長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等
ア.面接指導等(医師による面接指導及び面接指導に準ずる措置をいう。以下同じ。) の実施等
(ア)事業者は、労働安全衛生法等に基づき、労働者の時間外・休日労働時間に応じた面接指導等を次のとおり実施するものとする。
1.時間外・休日労働時間が1月あたり100時間を超える労働者であって、申出を行ったものについては、医師による面接指導等を確実に実施するものとする。
2.時間外・休日労働時間が1月あたり80時間を超える労働者であって、申出を行ったもの(1に該当する労働者は除く。)については、医師による面接指導等を実施するよう努めるものとする。
3.時間外・休日労働時間が1月あたり100時間を超える労働者(1に該当する労働者は除く。)又は時間外・休日労働時間が2ないし6月の平均で1月あたり80時間を超える労働者については、医師による面接指導を実施するよう努めるものとする。
4.時間外・休日労働時間が1月あたり45時間を超える労働者で、健康への配慮が必要と認めた者については、面接指導等の措置を講ずることが望ましいものとする。

(イ)事業者は、労働安全衛生法等に基づき、面接指導等の実施後の措置等を次のとおり実施するものとする。
1.(ア)の1の医師による面接指導を実施した場合は、その結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、遅滞なく医師から意見聴取するものとする。また、その意見を勘案し、必要があると認めるときは、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など適切な事後措置を講ずるものとする。
2.(ア)の2から4までの面接指導等を実施した場合は、1に準じた措置の実施に努めるものとする。
3.面接指導等により労働者のメンタルヘルス不調が把握された場合は、面接指導を行った医師、産業医等の助言を得ながら必要に応じ精神科医等との連携を図りつつ対応するものとする。

イ.面接指導等を実施するための手続等の整備
(ア) 事業者は、アの面接指導等を適切に実施するために、衛生委員会等において、以下の事項について調査審議を行うものとする。また、この結果に基づく必要な措置を講ずるものとする。
面接指導等の実施方法及び実施体制に関すること。
面接指導等の申出が適切に行われるための環境整備に関すること。
面接指導等の申出を行ったことにより当該労働者に対して不利益な取扱いが行われることがないようにするための対策に関すること。
アの(ア)の1から3までに該当する者とその他の者について面接指導等を実施す る場合における事業場で定める必要な措置の実施に関する基準の策定に関すること。
事業場における長時間労働による健康障害防止対策の労働者への周知に関すること。

(イ) 事業者は、アの(ア)の1及び2の面接指導等を実施するに当たっては、その実施方法及び実施体制に関する事項に、
労働者が自己の労働時間数を確認できる仕組みの整備
申出を行う際の様式の作成
申出を行う窓口の設定
等を含め必要な措置を講じるとともに、労働者が申出を行いやすくする観点に立ってその周知徹底を図るものとする。

ウ.望ましい対応
  事業場が常時50人未満の労働者を使用するものである場合には、ア及びイの措置の実施は平成20年4月1日以降となっているが、事業者は、それ以前であっても、過重労働による健康障害防止の観点から、地域産業保健センターを活用しつつ、可能な限り、必要な労働者に対する面接指導等を実施することが望ましいものとする。
  なお、当該事業場においてイの手続等の整備を行う場合には、事業者は、衛生委員会に代えて、労働安全衛生規則第23条の2に基づき設けた関係労働者の意見を聴くための機会を利用することが望ましいものとする。

(3)過重労働による業務上の疾病を発生させた場合の措置
事業者は、過重労働による業務上の疾病を発生させた場合には、産業医等の助言を受け、又は必要に応じて労働安全衛生コンサルタントの活用を図りながら、次により原因の究明及び再発防止の徹底を図るものとする。

ア.原因の究明
  労働時間の適正管理、労働時間及び勤務の不規則性、拘束時間の状況、出張業務の状況、交替制勤務・深夜勤務の状況、作業環境の状況、精神的緊張を伴う勤務の状況、健康診断及び面接指導等の結果等について、多角的に原因の究明を行うこと。

イ.再発防止
  上記アの結果に基づき、衛生委員会等の調査審議を踏まえ、上記2から5の(2)までの措置の則った再発防止対策を樹立し、その対策を適切に実施すること。


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